Friday, November 22, 2013

緑アリのドリーミング その1

  ドイツ出身ヴェルナー・ヘルツォーク監督のWhere the Green Ants Dreamという映画をご存知でしょうか? 
 ヴィム・ヴェンダースといえばご存知の方は多いと思いますが、彼と同じくニュー・ジャーマンシネマを代表するドイツの映画監督です。他にも、なかなかいい映画作っている監督です。
 彼の映画を一言で表現するのは難しいですが、あえて言えば、独特なユーモアと政治性があって、見た後ガッツンくる映画ですかね。この映画、調べたところ邦題では、「緑のアリが夢見るところ」と言うそうです。
 

ストーリーは、オーストラリアのアウトバック(ド田舎の砂漠地帯)から始まります。 そこで鉱山会社によるウラン鉱山開発の話が持ち上がりました。田舎の砂漠地帯といっても、誰もいない無法地帯というわけじゃありません。
遡ること数千年、この大地で太古から暮らすオーストラリアの先住民族、アボリジニのれっきとした土地でした。当然、開発には猛反対です。鉱山会社に金を積まれても、頑として動きません。それには、理由がありました。アボリジニに先祖代々から受け継がれた、「ドリーミング」といわれる神話です。
彼らは、「あんたらが掘り起こそうとしている地中には、巨大な緑アリが眠っているから起こしちゃならん」というのです。現代人である理性的な白人の鉱山会社社員に、この発言は通用しません。
「はあ?なんだって?どこにそんなバカな緑のアリがいるんだ!?」と怒鳴られて終わり。最終的には、鉱山会社の執拗な説得に折れてしまいます。

「緑アリのドリーミング」そんなものが、実際に存在するのでしょうか?

さっそく調査開始。元歴史家ジュリアの必殺技「リサーチ」です。

あっという間に、模範解答が弾き出されました。さすがです。

 場所は、オーストラリアの最北の地アーネムランドに位置するナバレック・ウラン鉱。(現在は閉山している。)住民らアボリジニの反対を押し切って、1970年ごろから掘削が始まり、79年より開山そして88年に閉山。その反対運動の資料の中に、ありました。

そこの土地のドリーミングの中に、Gabo Djang (Green Ant Dreaming)、日本語に訳すと「緑アリのドリーミング」という次のような不思議な話が。

「その大地を掘り起こせば、たちまちその地中から巨大な緑色のアリが出現し、世界を踏み潰し、破壊するだろう。」

その話は、ナバレック鉱山からほど近いオーエンペリというアボリジニーのコミュニティー(村)に行けば、おそらく住民らから聞けるのではないかということでした。
大陸中央一番上端あたりに位置するのがナバレック鉱山
 
ドリーミングのことを先ほど神話といいましたが、「教え」または、「法」と考えた方が無難でしょう。例えるならば、ニッポンでいうところの日本国憲法みたいなものですかね。
ドリーミングというのは、代々言い伝えられてきたストーリー(お話)の数々です。彼らの生活は、全てこのドリーミングによって規律を与えられ、支えられてきました。当然その土地の自然環境も、ドリーミングによってしっかり守られてきました。

このドリーミングの教えに従って、地元住民らは鉱山開発反対を訴え続けましたが、鉱山会社の功名で強烈な圧力を前に、ヘルツォークの映画の結末と同じく屈してしまいます。

 オーストラリアは、ウラン埋蔵量で世界一、輸出量では第三位。日本との関係でいうと、日本の原子力発電の燃料としてのウラン輸入先の第一位が、オーストラリアです。1974年に時の首相、田中角栄はオーストラリアの首相ウィットラムと会談し、76年から10年間、ウランの大量購入を約束しました。福島第一原発にも燃料として使われたそうです。

 東宝のヒット作「ゴジラ」のような話が、実際にアボリジニのドリーミングに存在したのです。しかも、巨大緑アリの破壊は、単なる言い伝えを超え、現実にフクシマという形で起きてしまいました。彼らは、われわれ現代人の合理的思考とは正反対の非科学的、ごく直感的な思考形態を持ちます。きっとこうなることは何千年も前から、予測がついていたのでしょう。

ガイジン(白人)がナバレックの大地掘りおこす。→ウラン日本へ運ばれる。→原発の燃料として使われる。→巨大緑アリ大暴れ=フクシマ。

 

これは、完全なるアボリジニの予言。我々の盲信する科学の力は、未来が見えるアボリジニの世界観に完敗です。

ゴジラにしろ、黒沢明の映画「夢―赤富士」にしても予知夢的な傑作だと、ちまたでは原発事故後に騒がれましたが、「緑アリのドリーミング」は、何千年も前から伝わる正真正銘のホンモノです。



  私達は、さっそく旅立ちました。「緑アリのドリーミング」を求めて。

ケン+ジュリアは、実行力の速さにおいては誰にも負けません。別の言い方をすれば、ただ衝動的なだけなんですけどね。

つづく。 

 

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